親の世界感、人生観が子に影響する世界
ある小学生の女の子は、学校の休み時間では、クラスのみんなが校庭で遊んでいても、いつも自分の机に座って本を読んでいます。いや、読んでいるふりをしています。 みんなとは心を閉ざして、打ち解けあって遊べないのです。
この子が幼い時、お母さんの手伝いをしたくて、台所などでお母さんにまとわりつきます。水をこぼしたりすると、お母さんはいつも「ほら!また、いつも邪魔ばっかりするんだから。お前はダメな子だね」と叱ります。
そうした毎日を繰り返しているうちに、女の子は成長するにつれてお母さんから離れていきます。「わかったわよ。どうせ私はダメな子なんだから。もう何もしないわよ」と心を閉ざしたのです。
心を閉ざすだけでなく、自己肯定のできない自信のない子になっていったのです。
ある男性なのですが、社会人になっても人とうまくコミュニケーションがとれず、人知れず悩んでいました。私の主催する話し方教室にいらしていたのですが、私が話したインナーチャイルドの話を聞いている時、ふとあることに気づいたのです。
「そうだ、私が人とうまく話ができないのは、幼い頃の父との関りが原因だったのか」と。
この人が幼い頃、お父さんに何かを話すと、決まってお父さんがその話をけなしてばかりいたそうです。
けなすだけでなく「うるさい、しずかにしろ」とよく叱られたそうです。そのためどうすればお父さんに叱られなくて済むかを考え、「そうだ、話さなければいいんだ」と子供なりに思ったそうです。
それがそのひとのコミュニケーションのあり方に大きな影響を与えていったのです。
親と子の軋轢や葛藤も親の世界感、人生観が大きな原因となっています。人間は肉体であり、わが子も自分たちが生んだ自分の子である、というわが子を自分の所有物であるという考え方が根底にあるから親と子の間の軋轢や葛藤が生じています。
この世界感、人生観を180度変えない限り根本的な解決には至りません。
私たちは母の胎内を通して生まれてきますが、母が私たちの内臓や目、頭髪といった肉体の機能を創れるはずがありません。
私たち人間を創っているのは生理機能をつかさどる生命の法則の働きがあるから、母の胎内に宿った生命が肉体人間として生まれてくるのです。
この生命の法則は人間には到底つくれません。人間が生まれるはるか昔から生命の法則は存在しています。
父と母は、生命が母の胎内に宿るための手助けをしたにすぎません。
生まれてきたわが子を創ったのは自分たちだという思いは、はなはだ不謹慎で、かってな思い上がりにすぎないのです。
崇高な生命を授かったととらえるべきです。そうとらえることで、わが子を自分の所有物だという思い込みを持たないようにし、尊厳をもった生命を育てていると感じることが、親と子の軋轢や葛藤が生じ
ない世界観、人生観だと思うのです。
私たちが今、現に生きていると思っている世界は、自分の意識が映し出された世界を認識しているにすぎません。
この現れている世界を、現象世界といいます。
現象世界の現れてくるしくみについては別の章で詳しく書きます。
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